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VAMOS! HISA 第1回 甲斐修侍「ヒサは人のためとなると、ものすごく気を使う」

   

 

7月1日に自伝「笑顔のパス」を発売した湘南ベルマーレの久光重貴。自身が患った肺がんと向き合いながら、現役選手としてプレーを続ける元フットサル日本代表は、自伝の中で「多くの人に支えられてきた」と綴っている。同時に、久光は多くの人たちの支えにもなって来た。この連載では久光と関わりを持った人たちから、久光にメッセージを送ってもらう。第1回は、久光がフットサルを始めたカスカヴェウ(ペスカドーラ町田)の創始者であり、現在も最年長Fリーガーとして、第一線で活躍を続けている甲斐修侍からのメッセージ。

 

甲斐さん

甲斐修侍(ペスカドーラ町田)

 

 ヒサ(久光)と初めて会ったのは、二子玉川でカスカヴェウ(現ペスカドーラ町田)が練習していたときですね。最初の印象は、『サッカーから来た感じのパワフルな選手』『体を生かしたスケールの大きな選手だな』という印象でした。

 

 当時は、うちの選手たちも割と厳しくて、昔の体育会系な空気の中でやっていました。そこにフットサル経験のない選手が来たので、ヒサも相当厳しく言われていたと思います。それでもヒサはカスカヴェウに加入して、最初に4番を着けていました。その事について、オレはまったく絡んでいないのだけれど、その番号をヒサ自身が選んでいないのであれば、一桁番号を預けられるくらい中心になっていくだろうという想いがチーム内にあったからだと思います。それくらいの存在感、最初のインパクトがありました。フットサルを分かっている、分かっていないを抜きにして、サッカーの能力が高かった。体も強かったし、基礎技術もしっかりしていた。右足のシュートも、左足のシュートもあるパワーシューターだったし、それくらいの位置づけにいたと思います。

 

 ヒサから最初にがんの話をされたときは、「これから検査してみないと分からないのですが、その可能性があります」ということを言われたように覚えています。そのときは「とにかく気持ちだけは切らさずに、落ち込むことはないから。今は医学も発達している。気持ちが滅入ってしまったら、病気はどんどん進行するだろうし」と、とにかくメンタル的な話ばかりしましたね。その後に、「検査して、やっぱりがんでした」という報告も受けました。正直、オレ自身も胸が詰まるくらいつらかったですよ。ヒサは以前に骨髄炎を患っていたこともあったから、そんなことが2回も続いたので。つらい気持ちも強かったですが、オレが落ち込んでも仕方がないし、ヒサには病気に立ち向かう姿勢を持った日々を送らせないといけないと思いました。

 

『病は気から』と、当たり前のようによく言いますが、実際にそういう体験とか、経験とかで克服している人はたくさんいます。だから、「たとえ何があっても、ヒサが『絶対に治ってやる、絶対に治してやる』という強い気持ちを持っているのと、持っていないのでは絶対に違うから。オレが偉そうに言うのもなんだけど、ヒサが滅入るとどんどん弱るから、『もう一回フットサルをやる』とか、『もう一回Fリーグの舞台に立つ』という気持ちは、きついだろうけど負けずに持ち続けろよ」という話はしました。

 

 あと、テレビで見た女性の話もしましたね。その人は、抗がん剤とかできつい治療をしたけど、余命3か月と診断された。そのときに、こんなにつらい思いをするくらいなら、自分の好きなことをして、好きなものを食べて、好きなところに行って、自分は死ぬと決めて、3か月間、そうやって過ごしたら、3か月経っても何も起こらない。4か月経っても何も起こらない。5か月経って病院に行ったら、がん細胞がなくなっていたと。その女の人が番組に出ていて、「治って良かったけど、その3か月で自分の資産を使い切るくらい豪遊したから、お金がなくなって大変なんです。でも、体は元気なので、お金は仕事をすればもらえるから、こんなありがたいことはない」と話していました。そんな話もヒサにして、そういうことも起こり得るんだから、無責任なことは言えないけど、絶対に気持ちで負けるなと伝えました。

 

 ペスカドーラ町田とか、湘南ベルマーレとか関係なく、フットサルをやっていて、ヒサのことを知っている人は、全員がヒサのことを応援しているから、おまえも絶対に負けるなと。

 

 ただ、ヒサはそれを実践しているから、本当にすごい。正直、自分が同じ立場になって、そんなことを言われても、戦えるかは分からない。きつかったら『ダメだ』ってなるかもしれないけど、ヒサは頑張って戦っているから、本当にすごい。昔からヒサは、人に対しての思いやりが強かったですね。自分ではなく、人のためとなると、ものすごく気を使うし、優しすぎるくらい優しいところがありました。芯が本当に強いんだと思います。今も「僕が頑張ることで、他の人が勇気づけられるから頑張らないといけない」と言っていますが、そうやって背負えるのは、頭が下がる思いです。

 

 ヒサとの思い出を…と聞かれても、何を言えばいいか分からない。それくらい毎日一緒にいました。練習から一緒に車で帰る日々を送っていた中で思い出深いのは、メシを一緒に食べていたんです。それも、結構な量を。ヒサがいっぱい食べるものだから、オレも『食え、食え!』と勧めて、腹いっぱい散々メシを食わせました。そんな生活を1年以上送ってから、ヒサに「実は家に帰っても、お母さんがつくった御飯がある」ということを聞かされたんです(笑)

 

 お母さんに「今日、甲斐さんと御飯に行くから、晩御飯はいらない」と言えばいいのに、アイツは一切、言わなかったらしいんです。「なんで言わなかったの?」と聞くと「お母さんが僕のために一生懸命つくってくれているから、お母さんのつくった御飯を食べないのは、お母さんに申し訳ないと思って」と言うんです。「なんで? じゃあ『母ちゃんの御飯があるから、甲斐さん今日は大丈夫です』って言えばいいじゃん」と言うと、「いや、シュウさん(甲斐)にせっかく御飯に誘ってもらっているのに、シュウさんと御飯に行けるなんてありがたいことはないんだから、それを断る理由はない」と。「オレが『もっと食えるんだろ。食え、食え』と言って散々食べさせたときも、『家に帰っても食べないといけない』という思いがあったんだろう?」と聞くと、「それはありましたけど、シュウさんと食べても、絶対にお母さんが出してくれた御飯は食べると自分の中で決めていたので、当たり前に食べてました」と。

 

 でも、その話を聞いてからも「ヒサ、御飯行く?」と言うと、必ず「行きまーす!」と連いて来てくれましたね。「いいの?」と聞くと、「大丈夫です。家でも食べます」って(笑)。それくらい、オレにも、お母さんにも気を使ってくれました。本当に心の優しい、思いやりのある子。本当は、そんなに食いたくなかったのかもしれない。『良かれ』と思って、食事に連れて行っていたオレが『余計なことをしていたな』というのが、ちょっと印象的なエピソードですかね。

 

 今の病気と戦っている中で、一番苦しんでいるヒサなのに、さらに周りの事を考えて、本当にきつい状況だと思います。でも、それもまたヒサらしいのかなと思いますし、ヒサの性格を考えたら、そういう自分以外の応援してくれている人たちのことを思ってというスタンスが、一番ヒサ自身を奮い立たせるのは、間違いないと思います。そういう意味では、逆に他の誰が同じようになっても、同じような応援は受けられないっていうくらい、たくさんの人がヒサのことを応援しているから、そういう人たちのためにも、絶対に病気に打ち勝ち、一人でも多くの人に、プレーしている姿を見せて欲しい。

 

「無理すんなよ」とか、そういう生ぬるい言葉は言えないけど、それがヒサの活力になると思うし、ヒサはそういうスタンスの人間だと思っています。ただ、本当にきつくて弱音を吐きたいときは、「きつい」って言っていいんだから。支援の気持ちを持っている人はたくさんいるから、ヒサ自身もメンタル的に強い気持ちで頑張ってください。

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