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フォトグラファー軍記ひろしの見た第1回アジアクラブ選手権イラン2010

   

現在、イランのイスファハンでAFCフットサルクラブ選手権を戦う日本代表の名古屋オーシャンズ。名古屋は予選グループを2位で突破し、8月4日にイランのタシサット・ダリャエイと準々決勝を戦う。
さて、今回のアジアクラブ選手権が開催されるイランのイスファハンという都市に聞き覚えのある方もいらっしゃるのではないだろうか。このイスハファンは2010年の第1回アジアクラブ選手権が開催された場所でもある。
この時も日本代表クラブとして出場していた名古屋は、準決勝でカタールのアル・サッドに敗れ3位で大会を終えている。名古屋といえば過去に2回アジアクラブ選手権を制しており「勝って当たり前」という雰囲気が日本のフットサル界にはあるのではないだろうか。
しかし、アジアクラブ選手権はそんな軽い大会ではない。本当に紙一重の戦いを経て、やっと優勝にたどり着けるという苛酷な大会なのだ。
今日はその苛酷な大会の様子を少しでも感じてもらえたらと思い、過去のフットサルナビを紐解くことにした。
フットサルナビ2010年5月号「イスファハン戦記」と名付けられた記事を紹介しよう。

 

 

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第1回 フットサルアジアクラブ選手権イラン2010
「フォトグラファー軍記ひろしの見たアジアクラブ選手権」

『イスファハン戦記』

イラン・イスファハンで行われたアジアクラブ選手権
アジア各国を代表するクラブチームが集結し凌ぎを削った
日本から参加した名古屋は、どんな戦いをしたのだろうか?
初開催となった今大会の検証とともに振り返ってみよう

アジアチャンピオンへ
日本王者が挑んだ

 第1回アジアクラブ選手権。個人的にこの大会は、イランのフォーラド・セパハン(以下、セパハン)と日本の名古屋オーシャンズ(以下、名古屋)が優勝を争うことになる大会だと思っていた。
『なご〜やお〜しゃんず!』と誰一人もコールしない完全アウェーの中、激しいブーイングを受けながら、そして『え?』と言いたくなるような怪しい判定が繰り返されるそんな中、イランチャンプに完全勝利! 静まり返るスタジアムで『ヘイ! ヘイ! カンピオン!』なんて勝利の歌を叫んでる空想を何度も夢の中でシミュレーションしていた…。
 そう、この日までは。

 

伏兵アル・サッドの
個人技に完敗

 日本に現実を突きつけたのは、準決勝で対戦したアル・サッド(カタール)。敵はセパハンだけではなかったという事だ。
 白いユニホームを着た細身のカタール人達は屈強なオーシャンズの選手達をひらりひらりとかわし華麗に7点奪っていった。
 この試合、完敗であった。
 予選でのアル・サッドの戦いぶりをみていると切り替えは遅く、走らない、規律も感じられない。出場している選手も6〜7人と、とても国際大会に出てくるようなチームとは思えなかった。まるでワンデイ大会にでも出てきそうな…ただただ個人がうまい、それだけのチーム。試合前まではそんな印象であっただけに、油断さえしなければ楽勝だと思っていた。
 しかし、結果は4—7での敗戦。
 アル・サッドの戦い方はドリブルを主体とした非常にシンプルなものだった。10番ホドリゴを中心とした、サイドラインギリギリの縦へのドリブル突破。もしくは、カウンターでドリブルを仕掛ける。全員が連動したプレーなど全くないが、ただそのドリブルが素晴らしくうまかった。
 彼らのドリブルはこねくりまわすタイプではなく、鼻っつらでかわすといった印象。ディフェンスが足を出せば、ほとんどかわされてしまう。7点目のゴールに至ってはホドリゴに名古屋の選手が3人かわされて、最後は華麗にループシュートを決められてしまった。試合後、名古屋の選手が『あんなドリブルをしてみたい』と語るほどの切れ味だったようだ。
 名古屋戦の勝利の後、アル・サッドの選手の何人かが涙していた。僕はその姿に『はっと』させられた。
 僕はアル・サッドに、ワンデイ大会に出てくるようなチームという勝手な偏見を持っていた。それだけに彼らの涙に意外な印象を受けた。「そうか気持ちか」と。技術面だけでなく気持ちの面でも、名古屋はアル・サッドに負けていたのではないか。戦い方で偏見を持っていた自分を恥じながら改めて勝負にこだわる事の大切さを感じ取った。
 この時点で名古屋のアジア制覇の夢は絶たれた。優勝を目指していたチームにとって切り替えは難しいであろう。ただ、最低限のノルマ3位は死守しなければならない。

実力差を越える
プライド

 

 本当に激しく厳しい試合であった。
 試合後、名古屋の選手達の表情は一様に疲れきっていた。安堵感とともに国際試合の難しさを改めて感じたからであろう。
 3位決定戦は名古屋のペースで始まった。やはり実力差がある。アル・サッドとの試合では、常に先手を取られ、苦しい試合展開を余儀なくされた。しかし、この試合では早い時間帯に流れにのって先制点を奪い、3—0まで差を広げた。実力差があり、得点差もある。僕はその時点で「大差の試合になるな」と想像した。
 今、冷静になって振り返ってみても、実際に大差の試合になってもおかしくない位の実力差はあったと思う。
 だが、そうはならなかった。
 前半終了時点で1点差まで迫られ、後半にパワープレーで同点。そして延長で逆転。
 名古屋が逆転された要因として僕は気持ちの問題があったように思う。つまり、ポート・オーソリティの「負けたくない」というプライドが実力差を超越させていたのだ。
 気持ちで押される名古屋は、実力差を示せない。
 しかし、試合終了間際になって、ようやく名古屋のプライドがポート・オーソリティのプライドを上回った。延長後半、残り20秒。
「タイには負けられない。俺たちの方が強い!」
 名古屋がプライドで同点にし、PK戦の末というギリギリいっぱいのところではあったが、なんとかなんとか3位を確保しメンツは保つことができた。

アジアレベルでは
別格のセパハン

 

 名古屋が3位になった同日、同会場で第1回アジアクラブ王者が誕生した。予想通りというべきセパハンの優勝である。
 今大会は「セパハンによるセパハンのための大会」などと揶揄された。しかし、そういったホームアドバンテージを差し引いてもアジアの中ではセパハンは格が違う。
 とにかく『パワフル』。当たり負けしないフィジカル、強烈なシュート。そして、そのイランスタイルを象徴するのが、イランの英雄シャムサイー。
 ピッチ上の選手達もパワフルならば、スタジアムに駆けつける観客達のパワーも、もの凄いものがある。
 セパハンの試合は毎試合、超満員の観客がスタンドを埋める。普段は湿度20%を切る『カラッカラッの』乾燥したスタジアムが、一瞬にして『ぬめっと』とした湿度の高い空間へと変貌する。まるで砂漠から熱帯雨林にでもトリップしたような感覚だ。
 宗教上、男性しか入れない特殊な環境によって『スタジアム』というより『闘技場』と言った方がしっくりくる。
 決勝戦に至っては闘技場に入りきれなかった観客達が、会場の周りを取り囲み、柵によじ登り、投石を繰り返していた。その闘技場の中で彼らの英雄達は戦い、勝利し、歓声に応える。そして、また少しだけ大きな英雄となる。
 日本ではとてもまねできるものではない。

日本がアジアで
強くあるために

 個人的には、負けるとするならセパハン以外に無いと思っていた。それだけに、まさかの準決勝敗退という結果は、他の国も成長しているという事実を気づかせてくれた。
 つい最近までは、イラン、日本、タイといった国を中心としてアジアのフットサルは展開されていたと思う。しかしこれは、実力が抜きん出ていたからではなく、フットサルに真剣に取り組んでいた国が多くなかったという要因もあるのではないか。
 今までアジアの勢力図にカタールが絡んでくる事はなかったし、中国、オーストラリアなどの国も徐々に実力をアップさせている。今後、カタールはアジアの4強に間違いなく入ってくるだろう。
 歩みを止めればすぐに追いつかれる。これからも新興国と同じくらいの勢いで成長を続けなければ、日本のアジアの有力国としての地位は安泰でないだろう。

 

 

 

121-1232

 

日本のクラブチームは
アジアのトップランナーに
成り得るのか!?

日本のクラブが
アジアで勝つために

 

 この大会を終えてからフットサルナビ編集部に「日本のクラブはアジアのトップに成り得るのか!?」という質問を受けた。正直言って、そんなこと分かる訳ないが、自分なりの考えを述べさせてもらおうと思う。
 日本がアジアでトップになるために欠かせない要因は3つあると思う。
㈰環境面でのサポート、㈪強い国内リーグ、㈫国際経験、以上の3つだ。
 まずクラブの「環境面」。今回のアジアのチームを見た限りでは、日本のレベルはやはり高い。名古屋に関しては、専用のスタジアムを持つなど世界トップレベルと言っても過言ではないだろう。というわけで、環境面は問題ない。
 次に「国内リーグ」。Fリーグもあり、一見、高いレベルを維持しているように見える。しかし内実は、名古屋とそれ以外のチームの実力差が大きく、優勝をかけた真剣勝負やヒリヒリした勝負の場には程遠いのではないか。
 名古屋は「勝って当たり前」「負けても順位が変わらない」ことが当たり前になったFリーグでは、日々の成長、特にメンタル面での経験が得られにくいだろう。この点は日本のフットサル界全体で改善を計ってほしい部分だ。こういった問題を解決するために、個人的にはプレーオフ制度の導入を提案したい。優勝をかけた一発勝負ならば、メンタル面で高い次元の経験を積むことができる。
 そして最後に「国際経験」。ここが日本のフットサル界に、最も不足している部分ではないだろうか。今大会でも名古屋が敗れた要因に、カタールのマリーシアがあったと感じた。グループリーグ中国戦でカタールは、名古屋が偵察に来ていることを知った上で、わざと下手に見えるようにプレーしていた。僕が「ワンデイ大会」のチームという感想を持ったのも、この試合を見たからだ。
 日本人にはこういった勝負にこだわるメンタリティが足りない。「勝つためなら何でもする」という決意が無い。ともすれば、正面から相手に挑み「勝敗にはこだわらない」という武士道精神に流されがちになる。しかも、その武士的な姿勢が人として求められたりもする。これでは国際試合では通用しないと思う。
 今大会を通して感じたことは、フットサルの質(レベル)=結果ではないということだ。試合を左右するのは単純な実力差だけではなく、フットサルの質+必要な要素(環境、メンタル、経験)である。日本にはこの要素を満たし、アジアチャンピオンになる土台は十分にある。あとはそれを使う選手の、心意気次第だろうか。

 

アジアクラブ選手権は
今後重要な大会となるのか?

 個人的には「重要な大会」どころか「なくてはならない大会」になると思っている。
 その理由は、2つ。
 まず、この大会により代表チームだけでなくクラブチームにもアジア王者という大きな目標ができる。この目標が、アジア全体のフットサルレベル向上につながることは、間違いないだろう。
 次に、国際経験の場として、この大会の意義は大きい。世界の強豪国は常に高いレベルで日々のリーグ戦などを行っているが、アジアでレベルの高い自国リーグを持っている国は数えるほどしか無い。そんな世界との環境の差を、少しでも縮める経験の場となることは大変な意義がある。さらにいえば、強いチームとプレマッチをするよりも、公式戦で真剣勝負をする方が「勝つ」ために必要な経験を積むことができる。
 アジア全体のレベルアップをはかるための大会として、アジアクラブ選手権は、今後ますますその重要さを増していくと思う。

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