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【U-20アジア選手権】ライター河合拓の〝ユース戦記〟

   

現在、タイのバンコクで行われている『AFC U-20フットサル選手権』

ユース年代を積極的に追い続けるライター河合拓氏が、現地で大会の模様を取材中だ。

ユース年代を追い続けているからこそ見えてくる河合氏独自の視点で、大会の裏側に隠されたエピソードをお伝えする。

(文&写真:河合拓)

 

 

 

日本が開始早々に2失点をした瞬間、僕は心の中でガッツポーズをしていた。

 

もちろん失点して負けそうになったことが嬉しかったわけではない。これまで彼らの試合を何試合か見てきた中で、どんなときも淡々とプレーをしている印象が消えなかった。

だが、負けるはずがないと思っていた相手に2点ビハインドとなれば、目の色が変わらないはずがない。しかも、それが開始早々だったことで、逆転できる時間は十分に残されていた。

 

 

実際、2失点をしてからの日本は目の色が変わった。

プレーオフ・ファイナルであれだけ積極的に仕掛けていたのに、初戦では借りてきた猫のようになっていた仁井貴仁は、自ら相手に向かっていくようになり、台湾戦でファーストシュートをミスして試合から消えていった伊藤圭汰も、ゴールを目指し続けた。

前日練習後には、「まだ反転してシュートを打つ形がない」と認めていたピヴォ初心者の樋口岳志も、積極的に左右に反転を仕掛け、強烈なシュートを飛ばした。

 

 

圧巻だったのは、植松晃都だ。

前半4分に自陣ゴール前でボールを持つと、体を寄せてくる大柄なタジキスタンの選手たちを吹き飛ばしながら前進。体を張ってボールを守り、相手を引き付けてラストパス。

内田隼太のシュートがブロックされたものの、チームを鼓舞するのに十分なプレーだった。

 

 

 

前半14分に山田慈英が1点を返したとき、これで大丈夫という雰囲気になりかけた。

その甘さを、すぐにタジキスタンは突き、16分に再び2点差とされる。またもや尻に火が付いた日本は17分、この試合、再三にわたって好連係を見せていた植松と樋口のホットラインで前半のうちにもう1点を返した。それまで果敢にシュートを打っていた樋口の姿勢が、植松への警戒心を緩めたゴールだった。

 

 

後半になれば、この試合が3連戦の3試合目となるタジキスタンの足も止まってくることは予想されていた。

後半3分に清水和也が同点ゴールを決めた日本は、その後もタジキスタンを押し込んでいく。

この時間帯でポストをたたいた伊藤のシュート、GKと1対1になった岡田祥慶のシュートが決まっていれば、試合はもっとラクになったはずだ。

しかし、日本は勝ち越しゴールをあげられないまま、試合を進めてしまう。

ようやくCKから清水の強烈なシュートが決まったのは、後半14分だった。

 

 

 

 

ここまで来れば、もう大丈夫だろう――。

そう思ったが、甘かった。

後半16分。相手のシュートが枠を外れ、看板に当たって跳ね返ってくる。

そのボールをGK山田正剛がキャッチ。

ここで最前線にボールが出れば、一気にチャンスになる。

山田正は投げようとする……ところが、最前線に抜けていった樋口が、ボールを全く見ていなかったのだ。

サッカーであれば問題ないのだが、フットサルでは致命的。

4秒がカウントされそうになり、山田正は慌ててボールを放すことになった。

その約30秒後、日本は自陣で直接FKを取られると、ボールが壁に入った樋口の股下を抜けてゴールへ。

確実にフットサルへ順応している樋口だが、こうした細いところの甘さが隠せるほど、アジアは甘くないということだろう。

 

 

 

 

追いつかれた日本は、残り1分36秒から植松をGKにしてパワープレーを仕掛ける。

その中でルーズボールに対して処理を誤った相手GKのミスを逃さず、残り43秒で中村が勝ち越しゴールを決めた。

 

 

 

 

日本が勝利を確信したなかで、タジキスタンは勝ち点1をあきらめなかった。

勝ち越し点を許すミスを犯したGKが攻め上がり、パワープレーに出る。

そして試合時間残り5.2秒、そのGKが日本の守備のズレを逃さずにシュートを決めてしまったのだ。

試合再開後、ロングボールを清水に入れた日本だったが、シュートは打てずに試合終了。

これまでフル代表が出ていたアジア選手権では、話題になることさえほとんどなかったタジキスタンを相手に、5-5という引き分けに終わった。

 

 

 

 

試合後、この日、タイに到着したばかりのブルーノ・ガルシア監督と話ができた。

ブルーノ監督が強調していたのは、アジアの勢力図が変わっており、日本が意識を変えないといけないということだった。

これまでであれば、イラン、日本は当たり前のようにアジアで勝てていたが、そんな時代は終わったのだと。

 

なかなか気持ちを切り替えるには、難しい状況だが、次の試合はすぐにやってくる。

19日、日本が対戦するのは、インドネシアだ。

前評判では、ベトナムがこのグループで日本のライバルになると目されていたが、個人的にはインドネシアの方がベトナムよりも強い印象を受けている。

しかも、18日のベトナムとの直接対決では、残り4秒で同点に追いつくという劇的な形で勝ち点をつかんでおり、モチベーションも高い。

グループステージの順位は、勝ち点で並んだ場合、当該チームの試合結果で決まるため、日本はインドネシアに勝てば2位以内が確定するが、おそらく一筋縄ではいかない試合になるだろう。

 

相手を見下すことなく、キックオフからチャレンジできるか。

この試合にハラハラ、ドキドキはもういらない。

 

 

 - インタビュー/コラム, ユース, 日本代表ニュース

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