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【U-20アジア選手権】第2回 ライター河合拓の〝ユース戦記〟

   

現在、タイのバンコクで行われている『AFC U-20フットサル選手権』

ユース年代を積極的に追い続けるライター河合拓氏が、現地で大会の模様を取材中だ。

ユース年代を追い続けているからこそ見えてくる河合氏独自の視点で、大会の裏側に隠されたエピソードをお伝えする。

(文&写真:河合拓)

 

 

 

残り時間8秒、植松晃都が自陣から蹴ったボールが、相手のゴールラインからピッチ外へ出て、インドネシアのゴール前で写真を撮っていた僕の近くへ転がってくる。

 

「ああ、これで大丈夫だな」

 

日本が勝とうが、負けようが、大会の最終日後に帰りのフライトを抑えていることもあり、日本が準々決勝に進出できなければ、21日以降のスケジュールは限りなく空白に近いものになる。

とりあえず、22日までは日本代表を追うことができそうだ。

 

 

植松のクリア。この時点で勝負あったと思われたが…

 

 

そう思ってパッと顔をあげた瞬間、ものすごい形相でGKユニフォームを着たサミュエル・エコー(6番)がゴールクリアランスのために戻ってきていた。

その顔は、まだ勝負をあきらめていなかった。慌ててカメラを構え直して、シャッターと切る。

 

ダボダボのGKユニフォームを着たサミュエル・エコーは、味方にボールを預けると短距離選手のような勢いで最前線へ駆けあがっていく。

ボールは要注意人物のレフティー、アルディアンシャー(12番)へ。アルディヤンシャーには清水和也が対応したが、体を寄せきる前にインドネシアの12番は左足を振り抜いた―――。

次の瞬間、白いユニフォームを着た選手たちは、雄たけびを上げてピッチを駆け回り、青いユニフォームを着た日本の選手たちは、呆然と立ち尽くした。

 

アルディヤンシャーが蹴ったボールは、ゴールの右へ外れていくコースへ飛んで行っていた。

しかし、その行く先には、サミュエル・エコーがいたのだ。

インドネシアは前日のベトナム戦でも、まったく同じ形で、試合終了4秒前に同点ゴールを挙げていた。

インドネシアには、最後の瞬間まで勝機を見出せるだけのチームとしてしっかりと磨き上げた武器があった。

 

 

インドネシアのカウンターからの同点ゴールの瞬間

歓喜に湧くインドネシアのベンチ

 

 

インドネシア人の記者に聞いたところ、彼らは普段から全員がフットサルをプレーしており、国内リーグだけではなく、世代別でのゲームも経験しているという。

そのうえで代表合宿も月に一度は行い、互いの特徴の把握、連係の構築を行ってきていた。

前日のベトナム戦でゴールが決まった瞬間、「サポーターかよ!」と突っ込みたくなるほど、大きな声をあげて歓喜を爆発させ、写真を撮ることを忘れていた彼は、日本戦に引き分けたときも喜んではいた。

だが、しっかりと決勝ラウンド進出を決めた自国の選手たちの写真を収めていた。

 

早合点かもしれないが、アジアで日本に勝つことの価値は、以前ほど高くはないのかもしれない。

数年前まで、日本はイランとアジアの2強を争っていた。

アジアでイラン以外に負けることなど、現実的ではないと思われた。

だが、2014年のアジア選手権ではグループステージでウズベキスタンに敗れ、2016年のアジア選手権では、決勝トーナメントでベトナムにPKで敗れ、5位決定プレーオフではキルギスタンにも敗れた。

たった一度のつまずきのはずだったが、この結果が日本戦を迎える国々に与えた勇気は、想像以上に大きかったのかもしれない。

 

「アジアの勢力図が変わっているんだ。日本は意識を変えなければいけない」

 

タジキスタン戦後にブルーノ・ガルシア監督に言われた言葉がよみがえってきた。

 

日本が反撃に出る間もなく、試合終了のブザーが鳴った。

前日はGK山田正剛を庇っていた伊藤圭汰、この試合FPで唯一出場機会のなかった岡部直樹が涙を流していた。

初めての国際大会で、彼らが、かつてのアジアの巨星だった日本代表の一員として背負っているプレッシャーの大きさは想像がつかない。

だが、まだ勝負は終わっていない。

 

 

 

1勝2分けで迎えるグループステージ最終戦、日本はここまで2勝1分のベトナムと対戦する。

日本はこの試合に勝つことができれば、決勝トーナメントに滑り込むことができる。

日本フットサル界の歯車が、大きく狂ったあの日、あの時と同じベトナムを相手に、若い選手たちが自分たちの可能性、日本フットサル界の未来を示せるか。

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