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【U-20アジア選手権】第3回 ライター河合拓の〝ユース戦記〟

   

現在、タイのバンコクで行われている『AFC U-20フットサル選手権』

ユース年代を積極的に追い続けるライター河合拓氏が、現地で大会の模様を取材中だ。

ユース年代を追い続けているからこそ見えてくる河合氏独自の視点で、大会の裏側に隠されたエピソードをお伝えする。

(文&写真:河合拓)

 

 

 

今回のU-20日本代表の選手たちは、ほとんどが日本代表としてプレーする経験をしていない。

その一方で、アジアのフットサルにおける「日本代表」というブランドは、非常に高いものとなっている。

仮に今大会でグループステージ敗退なんていうことになれば、日本代表の評価はさらに下がっていただろう。

 

そんな目に見えないプレッシャーを背負いながら臨んだ今大会、開幕前から鈴木隆二監督は「躍動感のあるプレーを引き出したい」と話していた。

しかし、試合を優勢に進めながらも、大事なところでゴールが奪えず、パワープレーからゴールを奪われ、気づけば3試合が終わって1勝2分け、グループステージ3位で最終戦を迎えることとなった。

 

選手たちは口々に、残り5秒で追いつかれたタジキスタン戦後のロッカールームが重苦しい雰囲気にあったという。

その試合を経て、残り1秒で追いつかれたインドネシア戦後のロッカールームの雰囲気は、さらに居心地が悪かったことは想像に難くない。

 

すべてがうまくいっていないわけではない。

それでも勝負のベトナム戦を前に、チームが恐れを抱いてしまう可能性は十分にあった。

 

ただ、この試合を前に、日本は負けないだろうという予想も立っていた。

ベトナムの状態が悪すぎたからだ。

ベトナムは、普段、国内で20分ハーフの試合を経験していない選手が多く、大会2試合目の時点で、すでに前半から足をつる選手が続出していた。

日本戦の前日に行われた台湾戦では、前半に3失点を喫して、あわや敗戦という状況にもなっていた。

試合終了間際に逆転して、何とか勝ち点3を得ていたが、日本を倒すだけの余力があるようには思えなかった。

 

そんな中で迎えた大一番、日本は見事な戦いを見せた。

序盤こそ、シュートが枠に飛ばなかったものの、前半6分に清水和也が強烈な直接フリーキックを叩き込むと、同13分には敵陣でボールを奪った樋口岳志が、そのまま左サイドから低い弾道のシュートをサイドネットに突き刺してリードを広げる。

守備では、この試合が初先発となったGK山田正剛が驚異的な反応を見せて、枠内に飛んできたシュートを弾き飛ばした。

 

 

 

後半の開始早々に中村充がCKから追加点を挙げると、その直後に緩みが出て1点を返されたが、痛々しいほど疲弊していたベトナムを相手にミッションを完遂する3-1の勝利を収め、勝ち点3を上積みした。

 

こうした大会の中で、選手たちは大きく成長するが、目に見えて変化が表れているのが、名古屋オーシャンズサテライトの岡田祥慶だ。

この代表チームが始動した直後は、追加メンバーでチームに加わった岡田だが、その後の合宿でアピールを重ね、名古屋サテライトから唯一の最終メンバー入りを果たす。

最終合宿でも、ファーストセット、セカンドセットのいずれにも入れなかったものの、今大会では与えられた短い出場時間で存在感を発揮。

ベトナム戦ではセカンドセットの一角に入るまでになった。

 

 

なぜか。

このチームにはドリブルを得意とする選手が数名いる。

府中アスレティックの内田隼太、デウソン神戸の山田慈英、シュライカー大阪の仁井貴仁。

おそらく技術的に、彼らが持っているモノは岡田に引けを取らない。

むしろ上回っていると思われる。

あとは、それをこの舞台で出せるかどうか。

大事な場面で決定力を見せている山田は別にして、内田と仁井は、まだ本来のポテンシャルを発揮できていない。

無理に仕掛けてボールを失うよりは、安全につなごう。

そんなプレーが少なくない。

対して岡田は失う回数も多いが、まず仕掛けることで相手の脅威となっている。

 

岡田に対して、鈴木隆二監督から特別な指示が出ているわけではないだろう。

監督は、サイドでボールをさらして相手の守備を広げる役割をアラに求める。

その中で岡田は、行けると判断することが、ほかの2人よりも多いのだ。

スペインにサッカー留学し、気づいたらフットサルに転向していたという岡田は、現地の選手たちとともにカタルーニャ州選抜にも選出された経歴を持つ。

彼の思い切り、監督の指示に従うだけではなく、持ち味を出していこうとする決断は、そうしたバックボーンがあってこそ、できるのかもしれない。

 

この話を書いたのは、次のイラク戦が、決して一筋縄ではいかない対戦相手だからだ。

実際に、イラクとグループステージで対戦したタイのミゲル・ロドリゴ監督は

「驚異的な強さだった。私たちは巨人と闘った。身体能力、技術、試合での経験。彼らはビースト(野獣)だった」

と、ホームで敗れた試合を振り返っている。

つまり、日本が勝つためには上積みが必要であり、より多くの選手たちが能力を出し切れなければ、厳しい結果が待ち受けているだろう。

 

この勝利により、日本が予選で敗退する可能性はなくなった。

ここからの戦いは、より挑戦者として積極的に臨めるはずだ。

ベトナム戦後には、孤高の天才キャラだった山田正剛が、先発を外れたときもチームのことを「家族」と表現したように、かつてないほどの一体感がチームには生まれている。

そのサポートを受ける中で、仁井や内田が本来の力を出し切ることができるか。

苦境を乗り越えたチームの、爆発力に期待したい。

 

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